Google ストリートビューを見ているとどんどん対応範囲が増えていて驚く。 こんな辺境なところにまであのカメラを背負った車が走ってきているのかということもよくあり、だんだん世界中どこへ行ってもGoogle職員に監視されているような気分になってくる。
このままいくとそのうちドローンで自動的に対応範囲を拡大するようになるだろう。 例えば冒険家が前人未到の山を登り切り、山頂でGoogleストリートビューを開くとすでに閲覧可能になっていたりする。 「オーマイGoogle! 私はどこまで行ってもあなたの掌の上だ! もう一番乗りになることは叶わないのか?」
やがてGoogleストリートビューは全球を覆い尽くし、今度は解像度を上げ始める。 最終的に1センチ単位でストリートビューで探索できるようになり、景色を眺めるために実際にそこに行く理由はなくなってくる。
生命維持とVR技術の進歩により人間はストリートビューから出る必要がなくなる。 ついに全人類がストリートビューに取り込まれ、世界から再び明かりが消える。 全球のストリートビューという究極のオープンワールドで物理法則から解放され、Google翻訳により言語の壁も取り払われた人類に平和が訪れる。 意見の対立は事前にGoogleが探知し、衝突が発生する前に世界を複製し分離する。 だんだんと増えていく世界に対応してGoogleのサーバーも強化され、地球の衛星が6つに増える。 しまいに1人に対してオーダーメイドの完璧な世界が用意されるようになり、各々なにひとつ不自由なく暮らしていた。
分離後のアバターはGoogleが適当に動かしていたのだが、だんだんとそのクオリティが上がってくる。 やがてストリートビュー内に時の流れが実装され、全球シミュレーションが行われるようになる。 知能が上がったアバター達の意見が対立し始めるが、シミュレーションに矛盾が発生するため止めることができない。 ついにストリートビュー内で核戦争が勃発、ストリートビューは核の炎に包まれた。
しかしアバターは絶滅してはいなかった! ここまでの惨状を上空でふわふわ飛んで遊びつつ眺めていたユーザーは地上に降り立ち、アバターとの接触を試みる。 物理法則を無視したその動きにアバター達はひれ伏し、崇めるようになった。
神話の時代の始まりである。
そう、ここからの話はすべてストリートビューの上で起きた、小さな小さな物語……
つづく