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#レビュー Linux財団のGreen Softwareに関するコースを受講した

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Linux Foundationは、Green Softwareに関するコースを提供している。 無料で受講できるので、実際に受講して、認定証を取得した。

(クリックするとオリジナルのPDFに飛ぶ)

この記事では、受講したコースの内容を紹介し、受講後の感想を述べる。

受講したコース

Green Software Training for Practitioners | Linux Foundation

入り口は日本語版が提供されているが、中身は英語だった。 一部画像の中に文章が書かれていたりするが基本的にテキストベースなので、機械翻訳を使っても問題なく受講できるだろう。

コースの内容

各章ごとに確認テストがある。

Chapter 1. Course Introduction

導入。Green Softwareとは何か、なぜ重要なのか、基本的な用語集などが出てくる。 3文字の略語がめちゃくちゃ多い。

Chapter 2. Carbon Efficiency

温室効果ガスについての説明と、なぜそれを減らす必要があるのかについての説明。

Chapter 3. Energy Efficiency

Green Softwareがまず第一に目指すべきこととして、エネルギー効率の向上について説明している。 データセンターのエネルギー効率の指標であるPUE(Power Usage Effectiveness)や、 Energy proportionality(エネルギー比例性。サーバーの負荷と消費電力は単純な比例関係に無いよという話。名前おかしくない?)などについて触れられている。

Chapter 4. Carbon Awareness

Carbon Awarenessという考え方についての説明。 電力の炭素強度が時間や地域によって異なることを意識して、環境負荷が小さくなるように需要を移動させるという手法。 これを実現するために、電力網の動作を理解することが重要である。 Marginal carbon intensity(限界炭素強度。需要の増加に対して増える炭素排出量)などの概念が出てくる。

Chapter 5. Hardware Efficiency

Embodied carbon(製造や廃棄による炭素排出量)について考える。 ハードウェアの製造により排出される温室効果ガスは、そのハードウェアが動作することにより排出される温室効果ガスよりも多い。 なので、基本的にはサーバーの台数を減らし、1台の利用率を上げることが重要である。 この点で、他のユーザとリソースを共有するパブリッククラウドの利用が推奨されている。

Chapter 6. Measurement

企業の温室効果ガス排出量を測定する方法についての説明。 GHG Protocolという測定基準について説明している。 また、ソフトウェアの炭素強度を測定する指標として、Software Carbon Intensity(SCI)が紹介されている。

企業が100%再生可能エネルギーを使っていると主張する場合、基本的にはRECという証明書を購入することを意味する。 これは、企業が消費した電力に対して、同量の電力が再生可能エネルギーで生成されたことを証明するもの。 しかし、この方法には問題があり、その対策として取り組まれている24/7 hourly matchingという概念についても触れられている。

Chapter 7. Climate Commitment

企業が温室効果ガス排出量を削減する際の方法についての説明。 排出権取引について触れられているが、根本的に排出量の削減をしないといけないことが強調されている。 カーボンニュートラルを実現するには、最悪排出量を測定し、同量の排出権を購入するだけでよい。 しかし、すべての企業がそれを行えるほどの排出権が存在するわけではない。 また、カーボンニュートラルやネットゼロなどの用語の定義が説明される。

Final Exam

最終試験。 全部で20問あり、合格点は80%以上。

受講後の感想

基本的には、温室効果ガスの排出量を減らそうと真面目に考えた時に思いつくことがだいたい網羅されていると感じた。 “for Practitioners"というタイトルのとおり、企業が環境に配慮した活動をしていると主張したい時に担当者が知っておくべきことが書かれている。 真面目なコースなので、一発逆転の天才的手法が出てきたりはしない。

最終試験は、20問中16問以上正解で合格のところ、17問正解で合格した。 一部英語の解釈が難しい問題があったが、めちゃくちゃ頭を使わないと解けないような問題はなかったので、めちゃくちゃ難しいということはない。 そもそも不合格になっても、何度でも受け直せる。 企業によっては、このコースを受講して合格することに対してインセンティブがあったりするらしく、そういう用途を想定した記述もあった。

コース自体は2時間程度で終わり、個別具体的な内容についてはリンクが貼られているので、興味があるところを掘り下げることもできる。 特に、炭素強度を意識したソフトウェア開発についてのリンクがいくつか得られたので、今後それらを使って何か作ろうと思う。

まとめ

Green Softwareに関するコースを受講した。 企業の環境配慮活動に関わる担当者が知っておくべきことをコンパクトにまとめた内容だった。 全く思いつかないような驚くべき手法は出てこない。 しかし、温室効果ガスの排出削減について考えるときの語彙が得られる。